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特別企画 : 解説 「トルクと馬力」

MINIの話ではないので興味の無い人は読み飛ばして欲しい。


疑問

実は高校生のときにバイクの免許を取って以来、ずっと理解できずにもやもやしていた事があった。トルクと馬力の違い及びその関係に付いてである。この問題は誰でも一度は陥るとされているが、スッキリと理解できる人はその中の100人に1人もいるであろうか。
トルクは力だ!とか出力は仕事だ!とかトルクは加速に関係する、最大出力はトップズピードに関係するとか。この車はトルクは大きいが出力は小さい、とか逆に出力は高いけど、トルクは細いとか様々な言われ方をしてきた。でも、スッキリと理解はしていなかった。

一番の疑問は馬力とトルクは hp = T*n/9549.3(kW) と表される比例関係にあるのに、トルクと出力を別のもののように表現する事だった。

「この車、馬力はあるんだけどトルクが細くてね」という言い方を普通にするのだが、馬力とトルクが比例関係にあるのなら、馬力の大きい車はトルクも大きいはずでしょ???
という疑問が常に解決されないままであった、、、。


開眼

そして数十年。最近、再びこの疑問が頭に湧いてきて、いろいろ考えていたら「フッ」っと思いつくことがあり、全てがスッキリと理解できたのだった。 「悟りを開くとはこういうことなんだろうか」 (^^;

その理解とは、トルクと馬力は全く同じものである。比例関係というよりも表現の仕方が違うに過ぎない。
トルクも馬力もその源は同じ、エンジンの爆発である。 なので私流の表現をするなら、トルクはその1回あたりの爆発力、そして馬力は爆発力に回転数を掛けたものである。

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実は最大トルクというのは、エンジンの1回当たりの爆発力が、最も大きい回転域での1回の爆発力である。 それ以外の回転域では、この爆発力が落ちるのである。なぜ落ちるのか?これは吸排気効率や点火時期など燃焼の最適化が変化する」からである。

エンジンはピストンの上下により、燃料を吸気排気しながら内部で爆発を起こすのだが、この吸気排気というのは必ずしも完璧に行われているわけではなく、無駄に燃料を吸ったり無駄に排出したりということが、色々な回転域で発生する。混合気という気体の流れを完全に制御するのは不可能なのである。

そこで、エンジンによって「低回転域での爆発力が強いエンジン」とか「高回転域での爆発力が強いエンジン」などの特性が現れる。中にはチューニングしたエンジンに多い「低回転域と高回転域の2箇所で山が有り、中速で凹んだ特性をもつエンジン」も良く見られる。
これはバルブの動きやシリンダー形状やシリンダーヘッド形状、さらには吸気ポート形状、長さ、排気ポート形状、長さ、はてはマフラーの形状や特性により、混合気の流れが理想的に流れる場合のエンジン回転域が変ってしまうからである。

このようにエンジンは回転している状態により力強く爆発する(大きなトルク)回転数もあれば、あまり力の出ない(小さなトルク)回転数も存在する。この違いの変化がトルクカーブである。

なのでトルクカーブを見ればこのエンジンはどの回転域で最も効率よく力強く爆破するのかが解るのである。MINIの場合は4500回転の時に最も力強く理想的にエンジンは動いている。
では115psを発生する6000回転という馬力は何かというと、トルクに単純に回転数と係数を掛けただけの数字である。MINIの場合は4500回転以上では4500回転の時ほどの力でエンジンは爆発しないのだけれども、エンジン回転数が高いので爆発回数が多く、結果的に出力は6000回転が一番強いことになる。
6000回転を越すともちろん、爆発力(トルク)は急劇に弱まる。これは多分バルブの開閉と混合気のバランスがまるで狂ってしまうのであろう。当然回転数は多くても爆発がぐんと弱くなるので結果的に掛け合わせた馬力も6000回転を過ぎると、急速に小さくなるというわけである。
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トルクカーブの意味
トルクカーブ(トルク出力曲線)というエンジンの特性をあらわしたグラフをよく見ることがある。
これは、「おおっ、このエンジンはトルクが凄いね」とか「このエンジンは使い難いピーキーなエンジンだ」とかグラフを見ながら知った顔で話すためのグラフだ。

MINICOOPERの最大トルクは150nm/4500rpm。つまり4500回転の時に一番大きなトルクを発生する。
一方最高馬力は115psを6000回転で発生する。これを見てもトルクと馬力は別物のように見えたりするのであるが全く同じものである。

このグラフ、いがいと大雑把に書かれていることが多いのだが、精密なグラフを見てみるとある事実が良くわかる。馬力はトルクに回転数を掛けた数値なので右肩上がりのグラフになるため、ちょっと目には解り難いのだがトルクの曲線の変化点が馬力のグラフにもそのまま現れている。馬力はトルクに回転数と係数を掛けただけなので当たり前なのだが、これまで説明したようにトルクと出力は同じものの表現方法が違うだけであるということがお分かりだろうか。

特別企画 : 解説 「トルクと馬力」_a0010297_172750100.jpg

特別企画 : 解説 「トルクと馬力」_a0010297_17332583.jpg


エンジン特性を見る上で、大事なのは「トルクカーブ」だ。
このトルクの山が右に寄っているのが、高回転高出力型エンジン、左に寄っているのが低回転高出力型エンジンである。ただそれだけだ。もちろん山の無いグラフはフラットトルク(モーターのような特性)である。

では始めに言った。「馬力はあるがトルクが無い」というような言い方は、どういう意味かというと。「このエンジンはトルク曲線の山が高回転域に寄っており、高回転域では大きな馬力を発生するが、低回転域ではエンジンの燃焼効率が悪く充分な力を発揮しない」という意味である。

なのでトルクが無いわけではなく、高回転域ではもちろん大きなトルクを発生している。
一般には「馬力といえば高回転域の最高馬力、トルクと言えば低回転域の力強いレスポンス」を指すことが多いことから、ものすごく省略して「馬力があるけどトルクが無い」なんて言い方をしているに過ぎない。

最後にもう一度、トルクと馬力は全く同じものだ。係数と回転数を掛けた表現方法が違うだけである。

長くなってしまったので、読んでスッキリとはいかなかったかも知れませんね。(陳謝)
by kan2_MINI | 2006-01-18 17:39
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